4月は火星の季節の暦であるLsが160°から177°までの観測となりました。視直径はしだいに大きくなり、およそ8秒です。南半球はそろそろ冬の終わりに近付いてきており、もうしばらくすると南極の雲も晴れ上がり、キラキラと輝く姿を見せることでしょう。4月上旬の南極地方はまだ雲に包まれており、4月5日の新川氏の観測(画像3、第1段)のように南極冠の様子をつかむことはできませんでした。
4月を振り返って特徴的な変化として、南極地方を取り巻く地域に幅が広く暗いバンドができたことでしょう。これはいつもの事ですが、ブルーのイメージでも暗く写り、南極の周辺部が晴れていることを示しています。これから先、急速に晴れ、はっきりした南極冠が見えてくることでしょう。
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画像3 2003年4月の火星 |
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撮影/新川勝仁氏(堺市)、D.Parker氏(米国)、Eric Ng氏(香港)、畑中明利氏(三重県)
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4月14日にD.Parker氏(米国)から注目すべき画像(第2段)が報告されてきました。画像4に本来見えるべき模様を示しましたが、ヘラスから西に帯状にダストがかかり、模様が見えないことが分かります。2001年5月、この画像と同じようにヘラスにダストのベールがかかり (池村氏、画像5)、そしてこの1ヶ月後に大黄雲が発生しました。このダストのベールにより、大気の温度が上昇したことが大黄雲の発生の引き金になったと筆者は考えています。
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画像4 4月14日の模様の見え方 |
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画像5 2001年5月ヘラスにかかるダスト |
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撮影/池村俊彦氏(名古屋市)、2002/05/17 16h24mUT CM=301 Dia.=17"
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ヘラスが見えなくなった時のLsの値は2001年で160°、今年は168°でした。両者の値が非常に近いことが気になります。ひょっとすると2001年のように、非常に早い時期に大黄雲の発生があるのではないかと気になります。2001年6月末の大黄雲の発生と同じLsの時は、今年は5月中ごろに相当します。
4月20日を過ぎるころになるとParker氏の画像にはダストのベールがキンメリウム(西経220°南緯20°)を帯状に覆っているのが観測されています(第4段)。これは2001年と違った展開です。2001年はヘラスから西へ進行しましたが、今年は東に移動しているかのように見えます。ただし、観測数が少なく断定はできません。このことから2003年は独自の進行をするのではないかと予想しています。4月下旬に入り、ヘラスにかかっていたダストのベールはしだいに淡くなり、本来の明るくなったヘラスが見えるようになってきました (畑中氏、第5段)。ベールの中心が移動したということでしょう。
次に、気になるダエダリア(西経120°南緯30°)です。1973年の大黄雲の発生した後に新しい大きな暗色模様が出現し研究者達を驚かせました。そのダエダリアですが、2001年の観測シーズンの後半になり、視直径が小さくなった火星面にそれらしき模様がとらえられていました。今シーズンはここにそのときの模様が再び現れていないか注目しています。残念ながら地球からは、まだ鮮明に変化をとらえた観測はありませんが、存在するのは確実なようです。2月14日のマーズ・グローバル・サーベイヤの画像では、この新しい模様がとらえられていました。今後、地球からもよい情報が得られることでしょう。Eric Ng氏(香港)の画像(第3段)は、ソリス(西経90°南緯25°)のすぐ西側(画像では右側)にやや暗くなった部分が見られます。
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