NASAの火星探査機『マーズ・リコネイサンス・オービター(MRO)』が3月に火星に到着し、科学観測を開始しました。MROは2005年8月12日に打ち上げられ、3月10日に火星に到着しました。当初は遠地点が43,000kmの細長い楕円軌道に入りましたが、面白いのは火星の大気の空気抵抗を利用したエアロブレーキによって軌道修正を行うことです。火星表面から107km以内の火星大気上層部を通過して減速し、これを数百回繰り返すことで、11月には高度300kmほどの円軌道を約2時間で周回するようになります。
MROには6つの科学機器が搭載されていますが、その中から広範囲カメラ(CTX)と高解像度撮像装置(HiRISE)の画像が公開されました。CTXカメラは火星全体の大気と表面を撮影し、最終的には1ピクセルあたり6mの分解能で、幅30kmの長方形領域をカバーします。MROの最大の特徴はHiRISEカメラで、50cmとかなり大きな口径の望遠鏡で、緑・赤・近赤外の3波長で撮影した擬似カラー画像です(画像1)。
この画像はエアロブレーキの前で距離が2,493kmで撮影されたものですが、1ピクセルあたり2.5mの分解能で、7.5mの物体を見分けられるそうです。最終的な軌道ではこれよりも10倍も近くなる予定で、そうなれば0.75mという机サイズの物体を識別することが可能になります。まさに、探査機の名前であるリコネイサンス(偵察)といえますね。しかしながら、この画像は本来は20081×9523ピクセルだそうで、公開されているJPEG画像(3048×9280ピクセル)でも32MBと、こちらは超ビッグサイズです。ぜひとも、WEBでアクセスして、その緻密な画像をご覧ください。
- 公式URL http://marsprogram.jpl.nasa.gov/mro/
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画像1 マーズ・リコネイサンス・オービターのHiRISE画像 |
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2006年3月24日撮影。左の全体図の四角領域の拡大が右図。画像提供/ NASA
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