SEB攪乱の発生源で見られる激しい白雲の活動は、木星内部から何かが噴出しているような印象を与えます。米国のE.J. Reeseは、地球の火山活動のように、木星の雲の下にSEB攪乱の原因となる特定の場所があるのではないかと考え、攪乱が最初に始まった経度が、9h55m30.11sという体系IIIに近い自転周期を持つ3つの発生源に統一できることを示しました。これがReeseの仮説と呼ばれるもので
す。体系IIIでの発生源の位置は下記の式で求めることができます。
発生源の経度(体系III) = L + 0.018055 x (JD - 2422301) ここで、JD:ユリウス日
- 発生源A: L = 108.7°
- 発生源B: L = 283.7°
- 発生源C: L = 177.9°
その後、1975年に発生した第1、第2、第4攪乱が上記の発生源に対応し、1990年と1993年の攪乱も発生源Bで発生したことで、この仮説の信憑性は大いに高まったのです。しかし、理論的な裏づけが何もないため、偶然の産物である可能性は否定できません。1975年の第3攪乱のように上記の発生源に全く一致しない攪乱もありますし、同じSEB内の白雲活動であるmid-SEBoutbreakの多くがReeseの発生源とは一致しない場所から始まっていることも大いに不利な材料となります。
筆者は今回の攪乱の発生経度が、Reeseの仮説に会うかどうかを計算してみました。発生経度を体系IIIに変換すると186°となります。これをReeseの発生源の位置と比べると、最も近い発生源Bでも40°以上の差があることがわかりました。今回の攪乱が一致しなかったことで、この仮説は再評価されることになるかもしれませんが、逆に見れば、今回の攪乱の特異性を示すひとつの証拠といえるかも
しれません。
(拡大) | ,[図] Reeseの仮説によるSEB攪乱発生源の統一
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