金星の輝面比が0.5を超える頃、金星の大気の影響で両極付近がやや明るく飛び出して見えることがあります。つまり輝面比は0.5を超えているにもかかわらず、見た目はまだ三日月形に捉えられ、その結果眼視的では0.5以下に見積もられてしまいます。観測結果をグラフにして見ると、明らかに観測値が理論値を下回っています。
これらの効果を18世紀に金星の観測を熱心に行ったJ.H.シュレーター(J.H.Schroeter、1745-1816)にちなんでシュレーター効果と呼んでいます。シュレーターが金星に関して書いた主な論文は3編あり,それらは当時最大クラスの46cm反射鏡で測微尺(マイクロメータ)を用いて金星の位相変化を注意深く観察し、さらに月の位相変化と比較を行ない、金星には大気があるという結論を得たというものです。
シュレーターはさらに金星の自転周期を求めるべく観測を続け、約24時間という値を得ています。残念ながらこの値は現在知られているどの値とも違っています。しかしながら、シュレーターの名は金星の観測史に燦然と輝く足跡を残しています。ヨーロッパが金星探査機に名をつけるとしたらシュレーターが最大候補となることでしょう。
[図1] シュレーターの観測 1792年の観測の1例で、かけ際の形状が月とは明らかに違うことから、大気の存在の証拠を探った論文の元になりました。(拡大) |
[図2] 金星の輝面比の観測結果 1975年に明治大学天文部が観測した結果。輝面比が大きいと眼視観測では例外なく小さく見積もられます。同様の観測は1964年に渡辺章氏が行った例(惑星ガイドブック1、p.90)にもあります。(拡大) |
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