天文ガイド 惑星サロン2008年6月号 (No.68)田部一志

木星石

今からもう16年も前のことになります。1992年7月、アメリカ東海岸の古都アナポリスで木星に関する国際会議が開催されたことがありました。最先端のプロ達の最新の研究成果に直に触れる絶好のチャンスと思い、月惑星研究会の仲間6名と参加することにしました。筆者にとっては始めての本格的な国際会議で、緊張した記憶があります。多くの有名な論文の著者の顔をまぢかに見る初めての機会でもありました。


[図] アナポリスで見つけた木星石(拡大)

会議が始まる直前に港近くの鉱物店(土産もの店)で見つけたのがこの石です。色といい、縞模様の配置といい、まさに木星が石になったようです(大赤斑があれば完璧なのですが)。確か38ドルだったから、当時の貨幣価値で4000円くらいのものでしょう。会議でこの石の出番はありませんでしたが、懇親会(飲み会)では何人かの学者に自慢しました。会議に出席していた人々のうち大御所の多くは引退してしまいましたし、当時大学院生だった人々が日本でもアメリカでも木星界の中枢にいます。16年という年月はそういうものなのでしょう。

最終日、再度店を訪れた時、いくつかあった類似の石の値段が上がっていたような気がします。何人かの人が探しに行ったのかも知れません。しかし、この石はどうも虎目石というわりとありふれた石だったようです。

前号へ INDEXへ 次号へ