昨年2月からニューホライズン探査機が木星に接近した機会に、探査機、HST及び
地上から木星が集中的に観測されました。その間、3月25日、木星面の北緯23度
にNTB攪乱が発生ことをHSTの画像が捉えました。NTB攪乱は1990年以来です。今
回のNTB攪乱を追跡観測し、それをもとに木星大気モデルのシミュレーション計
算を行なったサンチェス・ラベガ氏の論文(*1)がnature1月24日号に掲載されま
した。この論文の著者には、観測画像を提供したカルバロ氏、ゴ氏、パーカ氏ら
各国のアマチュア惑星観測家が名を連ね、カルバロ氏らの画像がIRTFの赤外画像
やHSTの画像と並び説明図に掲載されています。
今世紀になりデジタル動画で撮影し1000フレーム以上をコンポジットするという
手法が確立しました。アマチュアの惑星画像は革命的に精度が向上し、プロの観
測を充分に補完できることを、この論文が象徴しています。
サンチェス・ラベガ氏の論文の要旨は、以下です。
1. NTB攪乱の発生から消滅までの追跡が行なわれ、以下が観測されました。
(1)プルーム(*2)と呼ばれている白斑は、周囲の雲よりも更に30kmも上空にまで
高く発達していること、(2)プルームが最高169m/sで動いていたことです。
2. これらを反映して、木星大気モデルのシミュレーションを行なった結果、高
速のジェット気流が木星面の奥深く太陽光も届かないほどの深さにまで達してい
ることが判りました。
*1 "Depth of a strong jovian jet from a planetary-scale disturbance
driven by storms" A. Sanchez-Lavega, et al. nature 451,437-440 (2008)
*2 plume:柱状の噴出という意味です。昨年、プルームの後方でNTBが復活して
ゆきました。
*天文ガイド7月号には、編集部の不手際があり、
執筆名が取り違えられていました。
同誌8月号、P143に訂正が掲載されています。
”7月号の惑星サロンの執筆者名に誤りがありました.
執筆された三品さんに深くお詫びするとともに,訂
正させていただきます.
誤)田部一志 → 正)三品利郎”
[図1] 左)2007年4月5日 NASA-IRTF 右)2007年5月11日 HST 出典: NASA JPL News Release January 24, 2008(拡大) "Giant Storm Eruption at Jupiter Unearths a Buried Past" http://www.jpl.nasa.gov/news/news.cfm?release=2008-013 |
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[図2] 2007年3月27日7時7分UT ブラジル カルバロ氏 |
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