天文ガイド 惑星サロン2008年8月号 (No.71)米山誠一

土星の環の消失

今シーズンの土星は9月5日が合なので、観測シーズンは終わりに近くなっていま す。来年の話をすると鬼に笑われそうですが、来年の土星は15年ぶりに環が水平 になり、地球から見えなくなる年なので、環の消失を期待しているマニアも多い と思います。

地球から環が見えなくなるタイミングは2回あります。その一つは環の面が地球 の方向に向く時で、2009年9月3日頃です。別のタイミングは、太陽光が環に水平 に当たる時で、8月6日頃です。

しかし、2009年の土星の合は9月下旬なので、どちらも土星は太陽に近い位置な のです。8月6日頃でも土星と太陽の離度は36度で、環の消失はアマチュアの望遠 鏡で観察するのは、無理そうです。

しかし、地球の公転軌道の傾きは、土星の軌道の傾きと異なっているので、今年 の年末に、環の傾きが小さくなるタイミングがあります。

土星の視直径と環の幅方向の視直径の変化をグラフにしましたが、それを見ると、 今年の9月の合から土星本体の視直径は増加し始めますが、環の幅はその後も狭 くなって行きます。

それは、その頃に地球の公転軌道が、太陽系の南に傾いているので、地球が土星 の環がより水平に見える方向に動くからなのです。計算した結果、今年の年末に は環の幅の視直系は0.6秒まで小さくなります。0.6秒だとアマチュアの望遠鏡で も、充分に確認できる幅ですが、ほぼ直線的に見えるでしょう。

来年の合直前では環の消失は確認できそうも無いですが、その前に今年の年末に 細くなった土星の環を楽しめるでしょう。その時には衛星の観察も面白いし、ま た土星本体に落ちる環の影を監察するのも面白いと思います。


[図1] 土星の環の視直径変化(拡大)
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