世界最大の屈折望遠鏡(口径102センチ、焦点距離19.4メートル)を擁するシカゴ大学付属ヤーキス天文台は、シカゴの町から車で2時間ほど北へ行ったウィスコンシン州ウィルアムズベイというところにあります。
1897年に、ここに設置された大屈折望遠鏡は作られてから100年以上の歳月を経た現在でも、世界最大の屈折望遠鏡です。
惑星観測には1900年代初頭の眼視観測の時代と、1950年以降の物理観測の時代に使われていました。
さて、惑星観測者たるもの、誰でも大屈折望遠鏡の威力をこの目で確かめたいと思うものです。
幸運にも去る7月末、この望遠鏡で木星を覗かせてもらえることとなりました。
木星のスケッチが1枚とりたいので、15分ほど望遠鏡を占拠させて欲しいと申し出たところ、OKの返事をもらい、スケッチ用紙と愛用の鉛筆、さらには永らく使っていなかった擦筆(さっぴつ)までも持って出かけたのでした。
当日は夕方から雲ひとつない好天に恵まれ、日が落ちると木星が輝き始めました。
最初に見た球状星団M5は、ピントは今ひとつでしたが、色収差はほとんど感じられず、さらに相当の高倍率であるにもかかわらず、シンチレーションも感じられない不思議見え味でした。
木星を見るとどのように見えるのか、非常に気になるところでしたが、この望遠鏡は老朽化のため、天頂角30度以上には倒せないとのことで、木星には向けられないというのです。
返事をくれた人はもっと簡単に考えていたらしいのですが、結果として木星観望は諦めざるを得なくなってしまいました。
その後、60センチカセグレンで木星観望を行いましたが、普通の見え味で、シーイングも悪く、スケッチは断念せざるを得ませんでした。
|