木星は可視光以外にも、紫外(UV)、近赤外、メタンバンド等の色々な波長域で撮
影することができます。特にメタンバンドの画像は、高層雲の状態を的確に把握
できるため、多くの方が撮影を行っています。メタンバンドとは、干渉フィルタ
ーを使って木星大気に含まれるメタンにより吸収される特別な波長域で撮影する
方法です。メタンによる吸収が起こる主な波長は619nm、727nm、889nmなどがあ
り、特に889nmは吸収量が大きいため、図1のように特徴的な画像を得ることがで
きます。
可視光での明暗は、主に雲の反射能によるものですが、メタンバンドの画像は、
明るく見える部分は高い雲、暗い部分は低い雲でその原理は次のとおりです。木
星の大気には、ほぼ一様にメタンが含まれており、889nmの光がその中を通過す
ると、メタンによる吸収で減衰していきます。大気の上層にある雲は反射が高い
位置でおこるため、光が大気を通過する距離が短くなり、減衰量が小さい分明る
く見えます。低い雲は大気を通過する距離が長いため、減衰量が大きくなり、相
対的に暗く見えます。
図1の画像を見ると、大赤班・EZ(赤道付近)・北極/南極付近が明るく見えること
から、これらの模様が大気の上にある雲、もしくはヘイズと呼ばれる「もや」と
推定することができます。
今季話題となった淡化したSEBは、可視光ではEZと同じような色合いですが、メ
タンバンドでは、NEBと同程度に暗く見えます。つまり、EZより低い位置に雲が
あり、その高さはNEBとあまり変わらないと言えます。11月に発生したSEB攪乱の
先行現象として明るい白斑が観測されましたが、この白斑はメタンバンド画像で
も非常に明るく写りました。つまり、高層まで吹きあがった雲が発生したと考え
られます。
それでは、他の吸収波長を利用した場合はどうなのでしょうか? 次回は、727nm
の波長を利用したメタンバンド画像についてお話します。
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