火星面の模様は450nm以下の青色波長域では、暗色模様と明部の差が無くなると
言われています。模様が写らないので、その上を漂っている淡い氷晶雲などが抽
出しやすくなります。
私はより高い解像度を求めて、火星でもLRGB法による撮像を行っていますが、一
番の問題点は、青色光で氷晶雲や山岳雲、朝霧・夕霧を上手く検出できないこと
です。LRGB法はカラー合成後の画像から色を抽出するのがとても苦手で、特に火
星は大の苦手です。
図1のB画像はLRGB合成後の画像から青色光チャンネルを抽出したものですが、本
来見えてはいけない暗色模様が、ほぼそのまま出てしまっています。C画像は3色
分解撮影用の青色干渉フィルターを使い、モノクロカメラで撮影したものです。
暗色模様も僅かに写っていますが、夕霧や朝霧、赤道帯に漂う氷晶雲などを確認
することができます。特に大シルチス北部に夕霧があって覆い隠していることが
良く分かります。D画像はカラーカメラで撮影したものから青色光チャンネルを
抜き出したもので、解像度は少し悪いですが、C画像と同じく氷晶雲や朝霧・夕
霧を確認することができます。ただし、カラーカメラの青フィルターは近赤外域
を透過してしまいます。赤外カットフィルターを併用しないと暗部模様が写り込
んでしまうので、本来の青色光画像にはならず、氷晶雲などの検出には使えなく
なります。
氷晶雲などの検出用に専用の狭帯域フィルターを用意するのが本来だと思います
が、RGB3色分解フィルターの青フィルターや、カラーカメラの青色光チャンネル
を利用するだけでも氷晶雲を捉えることができますので、是非チャレンジしてく
ださい。
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[図1] いろいろな方法で撮影した青色光画像 |
A:LRGB合成の火星、B:LRGBの青チャンネル画像、C:3色分解撮影用の青フィルターで撮影(モノクロカメラ)、D:カラーカメラの青チャンネル画像。撮影:2012年3月13日、28cmシュミカセによる |
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