日本で木星観測が最初に行われたのは1910年代のことです。鹿児島の第七高等学校の生徒
達によるものでした。その後も断片的に観測が行われた例はありますが、戦前はなぜか火
星の方が関心が高い時代が続きました。連続して木星観測が行われるようになったのは、
1940年代半ばになってからです。ヨーロッパでは、1870年頃からアマチュアにより、連続
的に木星観測が行われていました。一方、アメリカでは、ALPO(月惑星観測者協会)が創立
されたのが1947年のことなので、歴史は日本と大きな違いはありません。現在までの間に、
70年近い年月が流れてしまい、昔のことは忘れられようとしています。
観測をどのようにして始められたのか、どうやって仲間を見つけたのか、なにより観測の
情熱はどこから湧いてきたのか、おそらく現代の観測者と共通することは多いはずです。
お話を聞こうにも、多くの観測者が鬼籍に入られ、そのチャンスは永久に失われてしまい
ました。断片的に記事になったものや手記は残されていますが、実感に乏しいように感じ
ます。歴史はこうして忘れ去られていくものなのかもしれません。
月惑星研究会では、それぞれの時代の観測者がどのように交流し、情報交換してきたか等
の、いわゆる昔話を70歳を過ぎたベテランの観測者の方々から順次聞き取りを行い、ビデ
オインタビューとして残すことを行っています。公開を目的としているわけではありませ
んが、惑星面の変化や現象の記録とは違うもう1つの貴重な記録として、後世の観測者の
参考になることでしょう。
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図1 佐藤健さんへのインタビュー |
元東亜天文学会木土星課長である佐藤健さんに、筆者がインタビューした際のひとコマ。2014年9月15日広島市こども文化科学館にて。 |
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