惑星の撮影は、CCD/CMOSカメラが主流となって以降、飛躍的に改善しました。性能面で大
きく影響したのは、@高感度化、A低ノイズ化、B高レート化の3点です。さらに最近は
USB3.0の普及により、1秒間に30〜100フレームもの速度で取り込むことができるようにな
りました。短時間に大量の画像を取得してスタック処理することで、高画質な画像が得や
すくなります。
この性能を利用して、多少ゲインを上げてでも露光時間を短くすれば、シーイングの影響
を軽減できるのではないか、と考えた方は多いと思います。ただ私の経験からすると、シ
ーイングの改善効果を実感したことはありません。実はこのような設定で撮影すると、シ
ョットノイズの影響で画像が荒れる可能性があります。このノイズは、カメラなどから発
生するのではなく、入射する光(フォトン)が揺らぐことで生じます。センサーが捕らえ
た光子の数nに対し、√nのノイズが発生するので、SN比はやはり√nになります。したがっ
て、nが小さくなる程SN比は悪化します。短時間露光はnを小さくするのと同じ事ですから、
必然的にショットノイズが目立つ画像になります。ただしランダム性なので、スタック処
理をすれば軽減できます。惑星撮影時の主たるノイズは、実はこのショットノイズなので
す。
ではどの程度が適切なのでしょうか。これは簡単な話で、実用的なフレームレートに合わ
せればよいのです。一例として1秒間に30フレーム取り込める機材構成の場合は、30msec
が適切な設定です。あれこれと書いた割には当たりまえの結論ですが、でも感度に余裕が
あるからと、意味なく数msec程度の短時間露光をしないようにすることが重要なのです。
月・太陽などの撮影も、理屈は同じです。入射してくる光を漏らさず電気信号に変換する
ことが、SN比の良い画像を得る基本となります。
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[図1] 参考画像 |
短時間露光の影響(やや極端な例ですが) |
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