天文ガイド 惑星サロン2016年2月号 (No.161)三品利郎

火星にホールインワン

12年前、2004年1月に双子のローバー、スピリットとオポテュニティが火星に着陸し、観 測を始めました。まず、スピリットがグゼフ・クレータに着陸し、続いてオポテュニティ がグゼフ・クレータとは反対側、メリディアニ平原にある直径約22mの小さなクレータに 着陸しました。このクレータは、後に「イーグル・クレータ」と命名されました。

プロジェクト代表者のスティーヴ・スクワイヤーズ博士は著書、「ローバー、火星を駆け る(早川書房、2007年)」の中で「オポテュニティはクレータの真ん中で目の前の露頭を見 ている。まさに、惑星間を5億キロも飛んでホールインワンした」、さらに、「アポロ11 号の月着陸船にちなんでイーグル・クレータと呼ぶことにした。この名前には、ちょっと したしゃれもある。ゴルフのパースリーのホールなら、イーグルはホールインワンのこと」 と、クレータの命名についてのエピソードも紹介しています。

画像はオポテュイティが撮影したパノラマ写真です。正面に露わになった岩盤があり、火 星の地質調査に最適な場所でした。オポテュニティは、この露呈した岩盤で「ブルーベリ ー」というニックネーム呼ばれた直径数ミリメートルの粒を見つけました。これは岩の成 分が水に溶け出して再び凝結した球状の粒でコンクリージョンと呼ばれているものであり、 そして、赤鉄鉱を豊富に含むことがわかりました。つまり、火星にもかつては水があった というわけです。

オポテュニティは、2015年の11月には総走行距離が42.63キロメートルに達し、エンデバ ー・クレーター(直径約22km)の西縁、「マラソン・バレー」で観測を続けています。

[図1] オポテュニティが着陸地点から撮影したパノラマ画像

前号へ INDEXへ 次号へ