セオドア・エブリン・リース・フィリップス(Theodore Evelyn Reece Phillips 1868〜1942)、イギリスの牧師で「木星観測の父」、「史上最大の木星観測者」などと呼ばれ、半世紀にわたって木星観測を継続し、何と生涯に3万回以上も観測したと言われていています。 そして数々のレポートを英国天文協会誌などに発表、1901〜1939年の大南熱帯攪乱や史上初めて観測された1919年の南赤道縞攪乱などを含み、貴重な記録として現在でも高く評価されています。 彼の主力望遠鏡は口径31cm、46cmなどのニュートン式反射で、その美しく正確で精密なスケッチは故村山定男先生も手本とされたそうです。 また温厚な人柄、優れた指導力からピーク(B.M.Peek)やハーグリーブス(F.J.Hargreaves)を初めとする、第一級の観測者達を指導・育成しました。
英国天文協会(British Astronomical Association)の木星課長(1900〜1933)、土星課長(1935〜1940)、さらにアマチュアでありながらプロ天文学者の世界最高機関である国際天文学連合の惑星委員会委員長、王立天文学会会長(1927〜1929)などの要職を務めたのも彼の人柄やそれに何といっても類まれなる才能の故だと思います。
著書にW.H.スティーブンソンと共著の「Splendour of the Heavens (1923)」があります。 スケッチや図が豊富で見ているだけでも楽しく、この時代に天文関係でこれだけの本が出版されたことは素晴らしいこと、インターネット・アーカイブにありますので読まれることをお薦めします。
[図1] T.E.R.フィリップス |
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[図2] フィリップスのスケッチ |
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左) 南熱帯攪乱の前端 1915年8月18日。中央) 南赤道縞攪乱 1920月2月13日。右) 南赤道縞攪乱と淡化中の大赤斑 1928月11月5日。20cm屈折(左/中央)と46cm反射(右)による。 |
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