天文ガイド 惑星サロン
2020年7月号 (No.214)
安達誠

火星の画像での記録について

月惑星研究会には火星の観測画像がたくさん送られてきます。 集まってくる画像はおおむね5種類あります。 一般的なカラー画像は、色の微妙な変化がひと目でわかりますから、全体の様子をつかむのに適しています。 輝度(L)画像を上乗せして、暗色模様を分かりやすくしているものも含まれます。 ただし、輝度(L)画像や赤外(IR)・赤(R)のモノクロ画像をカラー画像に上乗せすると、模様のよく出たきれいな画像にはなりますが、火星の表面の微妙な変化が消えてしまいます。 赤外(IR)光は火星大気中の靄(もや)やダストを通過するので、火星の表面模様の様子を記録するのに適しています。 赤(R)画像もおおむねこれに準じます。 緑(G)画像は火星大気中のダストやダストストームを明るく記録する性質があり、大気の混濁の状況を知るのに有用です。 青(B)画像は大気中の水や二酸化炭素の氷を反射するため、これらの分布が非常によくわかります。

火星の撮像は、これらの性質をよく知ったうえで、目的を持って記録することが大切です。 ダストストームやベールの観測は、カラー画像と赤外(IR)と緑(G)画像が不可欠です。 白雲の観測は、青(B)画像が有効です。 青(B)は撮像が難しいので、記録するのは大変ですが、重要なデータになります。 あれもこれもと撮るのではなく、カラー画像プラスあと1つの種類を撮り続ける方が、データとしての価値が高くなるのです。

[図1] 異なる波長による火星
岩政隆一氏による2018年6月1日の火星。左から赤(R)、緑(G)、青(B)の画像。波長によってこんなに違います。

前号へ INDEXへ 次号へ