天文ガイド 惑星サロン
2024年5月号 (No.260)
鈴木邦彦

アイピース拡大光学系は今も現役

惑星撮像の拡大率は他の天体と比べて異常です。 先日、木星撮像の後、月面に向けてSLIMが着陸した場所を撮像しましたが、木星ですら中規模クレーターと同じ大きさで、強拡大であることを改めて実感しました。 まさに光学系の回折限界領域を常用しているので、まずは主鏡の光軸調整をきっちりやることが高解像の前提、入念にやっておきたいものです。

この主焦点像をさらに2〜5倍程度に拡大するのですが、現在の主流は凹レンズ(バーローレンズなど)を用いて焦点距離を伸ばす方法です。 撮像を始めたころは使っていましたが、私の機材ではキレがなかったので、昔のフィルム時代の凸レンズ(アイピース)による拡大に戻っていろいろ試してみました。 フィルム時代とは違い小さな撮像素子なので、アイピースの焦点距離は長めの25o程度のものが適合します。

オークションで手に入れたニコン顕微鏡用10x接眼鏡で良い結果が得られたことに気を良くし、手元に死蔵していた24.5mm径のPentax XP-24を使ったら実に安定した高解像が得られ、今シーズンの主力として過去の拡大光学系が現代に蘇りました。 昨年発売されたタカハシのTPLアイピースは眼視での見えが素晴らしく、現在試しています。

というふうに、今でも充分に通用する凸レンズ系の拡大光学系ですが、カメラとの接続という点では便利な市販品があまりなく、ミニ旋盤でそれぞれのアイピースに合わせてアダプターを製作して使っています。 どこかのメーカーが注目してくれて製品化してくれると、もっと普及すると思うのですが。

[図1] アイピースごとに作ったカメラアダプター
後ろのT2スレッドチューブを接続します。左:Pentax XP-24、右:高橋TPL-25mmは径が大きくてぎりぎりです。

前号へ INDEXへ 次号へ